清子役、木村多江さんINTERVIEW
「本当の美しさは、見た目ではなく、その中にあるもっと大きなもの」
初めて脚本を読んだ時の、感想をお聞かせください。
──あまりにも現実とかけ離れている設定でしたので、どう受け止めていいのかわかりませんでした。女性の話としてはとても面白いと思いましたが、これを自分でやるというのは想像がつきませんでしたね。
今まで演じられた役柄とは全く違いますが、清子役を引き受けられた理由を教えてください。
──なぜ、この役が私なんだろうということが、すごく知りたくなったんです。原作や脚本を読んでも、自分の今までのイメージとは全く違うキャラクターなので、私にオファーしてくださったのが、すごく不思議でした。でも、見たことのない世界を見てみたかったのと、直感的に「これは私がやる作品だ」と思ったんです。スタッフの方々とのご縁もあって、気持ちがどんどんこの映画に向いて行ったので、最終的にお引き受けしました。
どんな役作りをされましたか。
──いつもは撮影前に、役作りのプランが7割くらいは出来ているのですが、今回は想像がつきませんでした。撮影現場もどんな場所か、行ってみないと分からない。でも清子さんにどんな過去があったとしても、島では関係ないという自由さの方が大事だと思い、プランはほとんど立てませんでした。私たちは日常生活で、秩序に守られて固定概念の中で生きていますよね。それが無くなった時、どうなってしまうのか。最初の1週間くらいは、毎シーン毎シーン、これでいいのかなと悩みましたが、日に日に清子さんになっていって。
そして、他の女性たちが島に来るあたりで、自分の感情が激しく動きました。役なのか自分なのか、よく分からない感情がブワッと湧いてきて。そのシーンに入るまでは、他の女の人が来たら清子さんはどう思うのか、全く想像できなかったのに、急に清子さんと一つになれたんですね。「私は清子だ。他の誰が来ても清子だ」と。清子さんを演じているとか、清子さんに近づこうとかいう感覚は完全に無くなったんです。
ご自身が清子ならどうされると思いますか。
──あそこまで素直に楽しめるかどうか、わからないです。すごくポジティブな人なので、開き直りも立ち直りも早い。普段の自分だと、何をするにも清子さんの何倍も時間がかかるでしょうね。でも、あの時の自分が味わった、美しくしないことの自由、着飾らないでいることの自由は大事にしたいです。たとえば女の人って、忙しくて自分にかける時間がなくて、自分が美しくないと思う時、すごく落ち込んだりするじゃないですか。でも本当は、一生懸命生きていることが、美しいんですよね。清子さんを演じて、本当の美しさって見た目のきれいさではなく、その中にあるもっと大きなものだということが、体感できました。
撮影の合間に、福士誠治さんや山口龍人さんら共演者の方々と、本編にないシーンを演じられたそうですね。
──現場に入って、いきなり二人のシーンをやろうと思っても、やっぱり難しい。現実的じゃない設定だからこそ、登場人物の関係性も見せて、リアリズムを強くしないと、見ている人が入りにくいんじゃないかと思いました。お互いの関係性の中で生まれる匂いみたいものが出てきてほしいと思ったので、それぞれの役者さんたちとエチュードをやりました。エチュードで演じたことが、実際に経験したことのように記憶として身体の中に残るんです。そうすると、ちょっとした台詞一つにしても、その記憶がお芝居に出てくるんですね。
一番好きなシーンは、どのシーンですか。
──どのシーンも思い入れがあって、選べません。ただ、最後のシーンを演じている時に、自分の中で起きた感覚が忘れられません。自分の中の島での記憶が、本当に自分が島で経験したかのように蘇ってきたんです。まるでアルバムをめくるように。豊かでちょっと切なくて、満ち足りた想いがあふれてきました。あれは初めての経験でしたね。
観客の皆さまへのメッセージをお願いします。
──女性はもちろん、男の人にも、自分の奥さんだったら、恋人だったらどうしようとドキドキしながら見てほしいです。男性でも女性でも、10代や20代の若い方でも、私より年上の方でも、大変な想いをしている人っていっぱいいると思いますが、この映画を見て、自分なりの自由とは何かを感じ取って頂けたらうれしいですね。皆さん、映画館を出た時に少しでも心が軽くなって帰って頂けたらいいなと思います。
◆STORY
私は生きる。男たちはどうする。
夫婦ふたり旅の途中で嵐に遭い、清子と隆は太平洋に浮かぶ無人島に漂着する。意外にもサバイバル能力を発揮する清子に対し、夫の隆は日に日に衰弱していく。ある日、16人の若いフリーターの男たちが漂着。さらには、密航に失敗した6人の中国人も加わり、若い男23人と、女は清子ただ一人という、奇妙な共同生活が始まった。
やがて隆が謎の死を遂げ、清子は島でただひとりの女性として女王のように君臨し始める。しかし、楽園のような暮らしも長くは続かず、少しずつ島のバランスが崩れ始める。争いを避け、ルールをつくり島に安住しようとする日本の男たち。脱出計画を立てながらも生存能力を発揮する中国人。相容れない2つのグループの間を渡り歩き、何があろうと脱出しようと決意する清子。
果たして、この<東京島>で、一体何が起こるのか?