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山田洋次監督の10年ぶりの現代劇は、吉永小百合さん演じるしっかり者の姉、笑福亭鶴瓶さん演じるダメな弟をめぐる笑いと涙の物語『おとうと』。家族の絆を見守る青年・亨を演じる加瀬亮さんに山田監督作品の魅力をきいた。
――日本映画界の巨匠・山田洋次監督作品への出演ですが、山田監督はどんな方でしたか。
「作品を観させていただいた上で抱いていたイメージは“厳しい方”。でも、全然違っていました。とにかく映画作りに夢中で、現場ではすごく楽しそう。とても丁寧で優しい方でした」
――監督から言われた記憶に残る言葉などありましたか。
「最初の本読みでお会いした時「君の映画は見てますよ」って。嬉しかったですね。僕のことを知っていてくださった。他にも昔の現場の話とか、監督自身の内面の変化とか、渥美清さんの話とか、いろいろお話してくださいました。“ガツン”とやられる覚悟をしていたのに、すごく身近にいてくださった感じがしました」
――撮影現場の雰囲気はどうでしたか。
「最初はとまどいましたね。山田監督の世界は確立されているので、自分がそこに溶け込めるか不安だったんです。でも、初日に「亨は見守る役なので、居てくれるだけいいから」って監督が言ってくださって、ちょっと安心しました。亨を演じるにあたっては、自分から何かをするんじゃなくて、まわりの人の芝居を受けて返すことに徹しました。監督の世界は、日常より階段を1つか2つ上がったところで構築されていて、僕からすると少しファンタジーの世界なんです。共演したことのある蒼井優さんも、いつもとちょっと違った芝居をしている。それを目の当たりにして、今までと同じでいいのかと迷ったのですが、僕は普段通りやるしかないと腹を決めました」
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――吉永小百合さん演じる姉と、鶴瓶さん演じる弟の物語ですが、私たちからすると蒼井さん、加瀬さんという子供世代との家族の話も身近に感じます。加瀬さんはこのような世代の違いをどのように捉えていらっしゃいますか。
「自分の世代で考えると、個人主義でバラバラな感じです。でも、上の世代…、向田邦子さんや、山田太一さんの書かれる家族像に憧れがあります。家族が居間に集まっている感じというか…。いざ自分が家族をもったら、そういう家庭になるかはわかりませんが、理想ではありますね。干渉されて煩わしいとも思えるけど、居心地がいい、暖かい感じ。自分の感覚には無いものですが、憧れます」
――09年は脚本家の山田太一さんのドラマ「ありふれた奇跡」、そして山田洋次監督の『おとうと』と、生きる伝説ともいえるお二方の作品に出演されましたが…。
「山田太一さんが「世代のコミュニケーションが途絶えてる。でも、世代の間にしかドラマはない」とおっしゃっていたのが印象的でした。僕も同世代とは付き合いがあるけれど、上や下の世代とは交流がない。それって“もったいない”と改めて思いました。山田洋次監督は78歳、『ニワトリはハダシだ』の森崎東監督は82歳、『硫黄島からの手紙』のクリント・イーストウッド監督は79歳。一緒に仕事をさせていただいて、いろいろな発見や学びがあったし、楽しかったです。下の世代とはこれからも仕事をする機会があるけれど、上の世代は歳を重ねてしまうのでもっと積極的に関わりたいと思っています。昨年は本当に貴重な年になりましたね」
――世代でいえば、山田監督のような世代の方と、若い監督の現場の違いはありましたか。
「極端な言い方かもしれませんが、今って“損得”で生きている時代じゃないかと思うんです。仕事ばかりしてると心も荒む。でも、上の世代の人たちってもっと謙虚で大らかなんですよね。前向きだし、圧倒的なパワーも感じる。若い監督は自分の表現したいことがあって、それを実現しようとするんだけど、上の世代の監督はもっと大きくて、人を巻き込んで一緒に作り上げていく感じがします。たから、怒られてもイヤじゃない。愛があるから。この作品で僕自身も大らかで優しい気持ちになれました。疲れている人には是非見てほしいですね」
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――蒼井優さん演じる小春と、加瀬さん演じる亨の恋も物語の核ですが、蒼井さんとの共演はいかがでしたか。
「蒼井さんとは何度か共演していて、どういう人か知っているから、恋人役ってちょっと照れくさかったです。ふたりに共通していたのは、山田監督の世界にどっぷりハマリたい気持ち。僕が撮影しているときに蒼井さんは映らないのにカメラの向こうで僕のために真剣に芝居をしてくれたりして、作品世界に入れるように助けてくれました」
――亨と小春の頑張らなくても分かり合える感じってステキですよね。
「亨は子供のころからずっと小春を想ってきた。そういうのもイイな、と思います。このふたりは微笑ましいですよね。僕自身も、カッコつけずにそのままの自分でいられる人が理想。自分は亨ほど真直ぐな人間じゃないから、ちょっとテレましたけど(笑)」
――09年は恵まれた年ということでしたが、2010年の野望を教えてください。
「僕は今35歳で、まぁ、中年なわけですよ(笑)。今までは若い役が多かったのですが、これからは実年齢に合った役や、背伸びして年を重ねた役もやってみたいですね。見ている方はとまどうかもしれませんが、“大人”を演じる準備をしたい。プライベートでは、体力がなくなってきているので今のうちに遠くに旅行をしておきたい。昔は、飛行機に24時間乗って南米に行っても平気だったけど、40過ぎたらきっとダメ(笑)、行かなくなると思う。だから、30代のうちに無理してでも行っておこうかなって思っています」
取材・文/坂本ゆかり
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『おとうと』
東京の郊外で、夫亡きあと小さな薬局を営み、一人娘の小春(蒼井優)を育ててきた姉・吟子(吉永小百合)。大阪で何ひとつ成し遂げないまま歳を重ねてしまった弟・鉄郎(笑福亭鶴瓶)。小春の結婚式の日、音信不通だった鉄郎が突然現れ、酔っぱらって披露宴を台無しにしてしまう。そんな彼をもかばう吟子が、ある出来事をきっかけに、鉄郎に絶縁を言い渡してしまう。喧嘩したり、許したりを繰り返す家族に、いつかは必ず訪れる最期の別れ。どのように家族を看取り、現実を受け入れていくのか。戦後の昭和に生まれ育った姉と弟の切りようにも切れない絆。そしてそれを見守るバブル景気の直前に生まれた娘と幼なじみ・亨(加瀬亮)。日本映画界の巨匠が描く、現在とこれからの日本の家族の物語。
加瀬さんが演じるのは小春の幼なじみ・亨。職人気質の真直ぐな青年は、時にドキッとさせるくらいのストレートな気持ちを小春にぶつける。
日本映画界の巨匠・山田洋次監督。10年ぶりの現代劇。家族の絆を強く感じる作品。
(c)2010「おとうと」製作委員会
